金沢市冬期バリアフリー計画 2-3(2)
2-3 地区における冬期歩行者環境の現況と課題(つづき)
3. 生活道路の現況と課題
幅員の狭い生活道路に雪が積もると、道路の幅員がさらに狭くなり、歩行者の通行に十分なスペースが確保できず、自動車とのすれ違いが非常に危険である。
生活道路では、人力による除雪を基本としているが、近年、中心市街地の空洞化や高齢化等が進み、除雪を行なう人手不足が問題となっているほか、排雪スペースがないことも大きな課題である。
1.中心市街地の空洞化や高齢化が進み、人力除雪が困難

高齢者にとって重労働の人力除雪
昔のままの街路形態が残っている裏通りでは、人力による除雪を基本としている。しかしながら、近年、中心市街地の空洞化、高齢化等が進み、除雪を行なう人手不足が問題となっている。
2.雪による歩行環境の悪化

雪による道路幅員の減少
細街路に雪が積もると、道路の幅員がさらに狭くなり、歩行者の通行に充分な空間が確保できず、自動車とのすれ違いが非常に危険である。また、自動車による圧雪で、路面が非常に固くなり、歩行者にとって非常に歩きにくい道路空間となる。
3.生活道路における排雪スペースの不足

排雪場所がなく道路に高く積み上げられた雪
また、除雪をしても、排雪する場所がないため、道路に雪が高く積み上げられた状態で残ってしまい、自動車や歩行者の通行に大変危険である。
4. バス停の現況と課題
バス停では、待ちスペースの減少、堆雪による乗降困難という問題が生じる。また、車道側溝部の堆雪によって、バスの正着も困難となる。
冬期は、道路渋滞を緩和する上でも、自動車からバスへの転換が求められるが、こうした問題によって、結果的にバスの定時性にも悪影響を及ぼしている。
このため、バス停での十分な無雪化対策が必要である。

図 ノンステップバス導入路線におけるバス停整備の優先順位
1.歩道に堆積した雪で、バスの乗降が困難

雪により乗降が困難なバス停(香林坊)
- 冬期においては、歩道に堆積した雪によって、バス停の待ちスペースの減少や、バスの乗降困難といった問題が生じる。
- また、車道側溝部に雪が堆積することによって、バスの正着も困難となる
2.ノンステップバス運行路線でも、まだバリアフリー整備が済んでいないバス停が多い
- 現在、ノンステップバス運行路線についても、すべてのバス停でバリアフリー整備がおこなわれているわけではない。
- したがって、今後、ノンステップバス運行路線の全バス停については、冬期における消雪施設を兼ね備えたバリアフリー整備を進めていく必要がある。

堆雪によりバスが正着できずノンステップバスの効果も半減 (石引)

バリアフリー整備の済んでいる猿丸神社前バス停
3. 除雪体制の現状と課題
ハード整備が困難で歩行者の通行の多い路線は歩道除雪路線となっているが、積雪深さが20センチメートル以上の場合のみであり、新たな対応策が求められる。また、生活道路等では、行政だけでの取組みには限界があり、住民が主体の除雪活動が求められるが、中心市街地の空洞化、高齢化等を踏まえ、住民との連携を深めていく必要がある。
1.歩道除雪の見直しが必要
- 道路幅員や道路構造の違いなどにより、歩道融雪施設の整備やアーケードの施設整備が困難な路線で、歩行者の通行の多い路線を現在、歩道除雪路線に指定している。
- 責任区分として、通学路については教育委員会の所管となっている。
- 歩道除雪路線は、積雪深さ20センチメートル以上の警戒積雪時に、小型除雪車等で除雪するため、実質的には新たな対応策が求められる。

表 金沢市道路除雪計画に基づく歩道除雪の内容
2.空洞化・高齢化を踏まえた住民除雪体制が必要
- 市街地では、地域コミュニティが密接であり、細街路や歩道の除排雪活動も住民や町会主体で行ってきた。
- しかし、空洞化にともなう人口減少や空き地、駐車場、空き店舗の増加、高齢化、共働き世帯の増加等、社会情勢の変化を受け、住民による人力除雪をいかに行うかが課題となってきている
3.国・県・市の連携が必要
- 歩道除雪に対しては、国、県、市、各主体で独自の助成制度を用意している。
- さらに、歩道除雪に対する住民への支援としては、搭乗式の小形除雪車やハンドガイド式の小型除雪機といった除雪機械(次項の表参照)の貸与や、購入の際の補助等があるが、市街地では、堆雪スペースがなく、排雪も課題となっている。
- 国、県、市が連携した効率的で効果的なモデル制度等の確立が今後の課題である。
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市 | 県 | 県 | 国 |
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制度 |
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冬期歩行者空間パイロット事業 |
石川県地域ぐるみ歩道除雪事業 |
ボランティア・サポート・プログラム(VSP) |
助成 対象 |
町会単位 | 市町村 | 市町村 | 実施団体 |
対象 区域 |
金沢市全域 | 公共施設・福祉施設等を中心に国道・県道・市町村道を対象とする。 | 雪みち計画の展開が難しい区域や県単独で歩道除雪が必要とされる区域を対象とる。 | 歩道除雪箇所は実施団体と協議の上、選定する。 |
役割及び 費用の負担 |
市は町会に対して、小型除雪機1台につき購入費の1/2以内、消雪用水中ポンプ1台につき購入費の1/2以内、消雪装置設置費、改修費の50%以内を助成する。 | 県は市町村に、機械購入、燃料費を支払い、機械貸与を行なう。 市町村は、搭乗式小型除雪機械購入の際に国庫補助を受けられる。 |
県は市町村に燃料費、機械損料を支払う。 市町村は、ハンドガイド式小型除雪機械購入の際に購入費の1/2以内の県補助(平成15年迄)を受けられる。 |
国は実施団体に対して、機械の提供、維持管理費用の負担、実施団体で実施困難な業務の費用分担をし、活動中の事故に備えた保険に係る業務を担う。 |
小型除雪機械の比較
メリット |
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デメリット |
運転になれていないと危険である |

小型除雪車(搭載式)
メリット |
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小型除雪車(ハンドガイド式)
参考資料
金沢市の助成制度

表 金沢市の助成制度の実績件数(ただし町会単位)
(注意)消雪装置設置補助は、昭和48年度より助成しており、昭和49~平成9年度実績は、61件
石川県の助成制度
公・単別 | 公共事業 | 公共事業 | 単独事業 |
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事業名 | 試験除雪 | 冬期歩行者空間 パイロット事業 |
石川県地域ぐるみ 歩道除雪事業 |
摘要 | パイロット事業を推進するために試験的に歩道除雪の効果を試験する区間であり、業者委託としている。 | 公共施設・福祉施設等を中心に国道・県道・市町村道を面的にネットワーク化し、歩行者空間を確保する。(雪みち計画の承認にて歩道除雪費(公共)の投入が可能となる) | 基本的にパイロット事業に準ずるが、規模的に左記雪みち計画の展開が難しい区域や県単独で歩道除雪が必要とされる区域を対象とする。 |
運用 | 各土木事務所が窓口となり、除雪機械は直接業者貸与する。 | 市町村が窓口となり、地域住民の協力を得て、計画区域内の歩道を面的に確保する。(要:雪みち計画) |
市町村が中心となり、地域住民の協力を得て、計画区域内の歩道を面的に確保する。 |
機械 | 県有貸与 | 県有貸与、市有借上(面的整備なので県道が県有とは限らない) | 市有借上(県補助機械) |
費用 | 業者に支払い(公共) (労力費、燃料費等) |
市町村に支払(公共) (燃料費) (労力費無償) (機械損料無償,県有貸与) |
市町村に支払(県単) (燃料費) (労力費無償) (機械損料) |
市町村の メリット |
— | 搭乗式小型除雪機械購入の国庫補助 | ハンドガイド式小型除雪機械購入の県補助(H15迄) |
問題点 | その後パイロット計画に移行するべきであり、住民協力を得られなくなる恐れがあるため、基本的に新規計画はなしとしている。 | — | — |
(資料:石川県)
- (注意)冬期バリアフリー計画策定によって、雪みち計画を要件とする公共事業の適用が可能となる。
- (注意)現在の石川県の歩道除雪の運用では、住民要望と住民協力のある区域についてのみ歩道除雪を行なっている。(試験除雪は除く)
国の歩道除雪制度

ボランティア・サポート・プログラム(VSP)の仕組み
国土交通省 |
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地元市町村 |
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実施団体 |
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(資料:国土交通省)