伊東家住宅
指定保存建造物:伊東家住宅(いとうけじゅうたく)
所在地 | 金沢市花園八幡町ハ100甲 |
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指定保存建造物 | 平成17年11月21日指定 |
伊東家住宅は金沢市北部の山裾、花園八幡町に建つ農家住宅です。現在の主屋は明治10年(1877年)頃茅葺きで建てられ、昭和8年(1933年)に束立てが行われました。
間取りは、オエの奥に棟通りを挟んで5室が整然と並ぶ、加賀I型大型農家の典型的な平面形式です。間口は7間で、間口いっぱいに奥行3間のオエを設けるため、オエの広さは42畳あり、この形式では最大級の家の一つです。
オエは六本の基本柱で囲まれているが、棟通りを中心に北側柱間は2間、南側柱間は1間半というように、大小にとっています。天井は4.8メートルと高く、奥行方向に通常3本掛かるサシモンが1間おきに5本架かり、ヒラモンより上の小壁は通常2段に設ける貫を3段設けているなど、非常に堅牢な構造となっている点も特徴的です。
昭和8年の束立てでは茅葺きを瓦葺きに改め、オエとニワ境の柱列で破風を立ち上げています。当初ニワは奥行3間でしたがこれを2間とし、ニワを全て下屋として取り込みました。正面柱通りで破風を立ち上げるのが一般的であり、このような手法は他に例を見ません。基本的な間取りは変更していないとされますが、柱などの痕跡によりオエの南側は少なくとも1間は拡張したと推定されます。当初の茅葺き屋根は左右の基本柱間に架けられ、その外側は下屋でした。
伊東家住宅は、主屋が市内に現存する中でも数少ない加賀I型最大級の農家住宅であり、敷地内に土蔵、肥料小屋など附属建物も残り、農村集落の中心を成した農家住宅の屋敷構えを、今なおよく伝える貴重な建築物です。