扇形梅の絵香合

有形文化財 美術工芸品:工芸品
扇形梅の絵香合(おうぎがたうめのえこうごう)

扇形梅の絵香合の詳細
所在地 金沢市本多町3-2-29 金沢市立中村記念美術館
市指定文化財 平成2年4月11日

扇をかたどった白い磁気質の素地に、透明鈿を掛け、色絵の具と金泥による上絵付けを施した作品です。幅9.1センチメートル、奥行6.6センチメートル、高さ2.7センチメートルで、扇面に描かれた梅の絵は、幹を緑と黒、枝に下がった蕾を黄で表しています。幹の傍らに赤と紫の光琳梅を配し、側面は赤と緑で更に扇面と側面の全体を金泥で覆い尽くし、典雅で純日本的な美しさを見せています。底裏は、全面が露胎となり、中程に「加陽製」の角形陽刻印が押されています。
底裏の「加陽製」角形陽刻印により春日山窯の製品と知られ、茶道藪内家10世紹智(じょうち、1840年~1917年)の箱書きより青木木米(もくべい、1767年~1833年)の作と伝えられています。木米は仁清、乾山と並んで日本三名陶の一人とうたわれ、この香合は型物に優れた木米の技巧がよく発揮されています。木米は各種の中国陶磁の写しに独自の境地を開きましたが、この香合のような仁清風は数少ない作例です。
春日山窯は加賀藩の産業振興策により、文化4年(1807年)京都から青木木米が招かれ、金沢城下の近郊春日山に開かれました。翌年、諸般の事情により木米は京都へ帰り、木米の助工を務めた本多貞吉が文化8年小松の若杉窯に移ると衰退し、文政元年(1818年)廃窯します。しかし春日山窯開窯が契機となり、加賀地方南部で若杉、小野、吉田屋、松山などの諸窯が開かれ、春日山窯は当地の窯業史上重要な役割を果たしました。青磁、染付、呉須赤絵写し等、日用品を主とした春日山窯の製品の中にあって、この香合のような精作は珍しく、木米自身により特別な納品先のために作られた物と考えられています。
なお、箱書は紹智の先に福田随竹庵(ずいちくあん)が記しています。随竹庵は藪内流を学び、取此斎(しゅうしさい)と称し、加賀藩の支藩大聖寺藩の茶頭を務めました。藪内家10世竹翠紹智は、もと福田随竹庵の3代で大聖寺藩茶頭を務めましたが、9世竹露紹智の没後迎えられ、10世を継ぎました。

扇形で扇面が波打っておうとつがあり、要の部分に黄色い花、側面に赤と緑のまるい形の模様が描かれている香合の写真

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