佐野家伝来能楽資料

有形文化財 美術工芸品:彫刻
佐野家伝来能楽資料(さのけでんらいのうがくしりょう)

佐野家伝来能楽資料の詳細
所在地 金沢市広坂1丁目2番25号 金沢能楽美術館
市指定文化財 平成16年7月12日指定

佐野家伝来の能楽資料は、5代藩主前田綱紀時代から取り入れられた宝生流の能楽に由来します。藩政時代から藩主を頂点として一般庶民に至るまで愛好されてきた加賀宝生ですが、明治維新の改革によってその継承が危ぶまれたとき、佐野吉之助の努力によって消滅を免れた経緯があります。加賀藩と歴代宝生流宗家とも深い繋がりのあったなかで、特に佐野家は、直接宝生宗家の指導を受けてきたシテ方の能楽師であり、能楽に関する資料も、佐野家親子2代にわたり私財を投じ収集された努力によって今日に伝えられたものです。これらの資料は加賀宝生の歴史を語る証そのものであり、極めて貴重な資料です。

能面

14面のうち、父尉(ちちのじょう)・飛出(とびで)・真蛇(しんじゃ)の3面は室町時代の古作であり、茗荷悪尉(みょうがあくじょう)と二十余(はたちあまり)はこれにつぐ作品で個性に富む面です。また、面打で近世の名工の一人、児玉近江作の小尉(こじょう)も含まれるほか、悪尉(あくじょう)・長霊(ちょうれい)べし見(み)・茗荷悪尉(みょうがあくじょう)・般若・蛙・小面(こおもて)・節木増(ふしきぞう)・曲見(しゃくみ)・中将(ちゅうじょう)などは江戸中期の上作です。これらの面は、現行の演能に使用される種類のものですが、このうち二十余、蛙、節木増などは宝生流特有の面の型を伝える作品として注目されます。

能装束

あらゆる宝生流の現行曲に対応できるよう多種の能装束が集められています。装束の種類は、唐織(からおり)・厚板(あついた)・縫箔(ぬいはく)・摺箔(すりはく)・熨斗目(のしめ)・狩衣(かりぎぬ)・長絹(ちょうけん)・舞衣(まいぎぬ)・法被(はっぴ)・側(そば)次(つぎ)・大口(おおぐち)・半切(はんぎれ)と、主だった能装束はすべて揃っています。
中でも、江戸時代初期に遡る4領の唐織(からおり):紅地(べにじ)入子菱(いりこびし)に松橘(まつたちばな)向(むか)い鶴丸(つるまる)文唐織(もんからおり)・白地(しろじ)花菱(はなびし)亀甲(きっこう)に向(むか)い鶴丸(つるまる)文唐織(もんからおり)・紅地(べにじ)幸(さいわい)菱(びし)に椿折枝(つばきおりえだ)文唐織(もんからおり)・紅地(べにじ)牡丹(ぼたん)唐(から)草(くさ)文(もん)唐(から)織(おり)は、能装束が定型化していなかった江戸中期以前の能装束の様相を伝えるものとして、大変貴重な装束です。また、特色ある大胆な文様の白茶地(しらちゃじ)荒磯文(ありそもん)袷(あわせ)法被(はっぴ)や、江戸後期の作で前田家伝来の能装束2領:蜀江文錦袷狩衣(しょくこうもんにしきあわせかりぎぬ)・黒紅段(くろべにだん)流水(りゅうすい)萩(はぎ)に扇(おうぎ)散(ちらし)文唐織(もんからおり)があります。なお、能装束のほか小物として必要な鬘帯(かずらおび)、腰帯も江戸中期頃の作です。

能でシテ方やワキ方の持つ扇は、中啓(ちゅうけい)と呼ばれ、親骨の上端が外側に反っていて、畳むと銀杏の葉状に似て先端が半開きになります。また例外を除き、塗りのない白骨は男役、黒塗りの骨は女役と定められています。
指定された中啓は、神扇と尉扇(じょうおおぎ)の2本にシテが直面(ひためん)のときに持つ男扇と、宝生流「鷺」専用の扇のほか、中年女性と老女役の扇が4本に、若い女の狂女役と鬼女役の扇各1本で、いずれも宝生流仕立ての扇です。

金色に水色の模様が入っている扇子、金色と赤色の模様に植物の葉が描かれている扇子、白い眉毛と長いあごひげの能面、2本の角と鋭い目に大きく空いた口の赤般若、白い肌で口元が少し空いている女性の小面、白、緑、赤のそれぞれ異なる模様の生地がパッチワークのように継ぎ接ぎされた着物の写真

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