金沢の用水
金沢を流れる用水は、そのまちなみにうるおいと安らぎをあたえてくれています。昔から生活の水として大切な役割(やくわり)をもち、さまざまに利用されてきました。そして今も変わらないその流れは、わたしたちのくらしと深いつながりをもち続けています。
金沢の用水の特徴(とくちょう)は、他の都市と比べものにならないくらい数が多く、それぞれの用水が家と家の間をぬけて、網(あみ)の目のように流れていることです。また、水がきれいで、水の量が多いことも特徴です。
現在(げんざい)、金沢の用水の数は全部で55、長さを全部合わせると約150キロメートルになるといわれています。
代表的な用水
辰巳用水(たつみようすい)
辰巳用水
1631年の大火事で、金沢城(かなざわじょう)は大きな被害(ひがい)を受けました。そこで藩主(はんしゅ)は、井戸水(いどみず)にたよっていたお城(しろ)の水を、犀川(さいがわ)から引き入れることはできないかと考えました。しかし、犀川からお城の間には小立野(こだつの)の台地があるのでその工事は大変むずかしいものでした。それでも、すぐれた技術(ぎじゅつ)と努力により、約11キロメートルにもおよぶ用水が、わずか1年足らずで完成しました。
鞍月用水(くらつきようすい)
鞍月用水
いつも多くの人でにぎわう香林坊(こうりんぼう)を流れているこの用水は、1600年代の初め頃に、お城を囲む堀(ほり)としての役割も果たせるようにつくられました。
大野庄用水(おおのしょうようすい)
大野庄用水
1590年頃につくられた、金沢で最も長い歴史をもつ用水です。お城の建築(けんちく)材料を運ぶためにも使われました。昭和の初めころまでは、水車が回っている風景が見られました。
【ちょっとコラム】 辰巳用水(たつみようすい)
辰巳用水の特徴は、長いトンネルがほられていること、勾配(こうばい)が200分の1をたもっていること、そして、低地から高地に水を引き上げるために逆(ぎゃく)サイフォン工法を用いていることなどが挙げられます。これほどの工事が約380年も昔に行われたというのは、ほかには例を見ないことです。
用水の役割
用水は次のような役割により、金沢の伝統(でんとう)をささえてきました。
農業用水 | 新しく田んぼをつくったり、田んぼや畑をうるおすために使われています。 |
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生活用水 | 洗濯(せんたく)や水遊びのほか、夏はかごにすいかやうりを入れて冷やしたりしていました。また冬は雪をすてる場所として使われています。 |
庭園の曲水 | 武士(ぶし)やゆたかな町人は、用水の水を取り入れて庭に水の流れをつくりました。兼六園(けんろくえん)には辰巳用水の水が流れています。 |
工業用水 | 製粉(せいふん)や精米(せいまい)をするための水車を回していました。また、友禅(ゆうぜん)流しなど、染め物(そめもの)を洗うことにも使われました。 |
防火(ぼうか)用水 | 火事が起こった時、水をくみ上げて火を消していました。今でも緊急時(きんきゅうじ)の消火用の水として使われています。 |
兼六園の曲水
友禅流し
加賀(かが)とびはしご登り
用水のこれから
用水を守り、身近な生活環境(かんきょう)を快適(かいてき)なものとするために、1996年(平成8年)に「金沢市用水保全条例(ほぜんじょうれい)」が制定(せいてい)されました。
用水のそばにくらす人たちの協力のもと、用水の再生(さいせい)への取り組みが始まっています。
- 景色との調和
古いまちなみ、繁華街(はんかがい)、緑のゆたかな場所など、周りの景色にあった用水にします。 - 開渠(かいきょ)化
道や駐車場(ちゅうしゃじょう)で用水がかくれている所をへらしていきます。 - きれいな水の流れ
一年中水が流れるようにして、定期的に掃除(そうじ)をします。また、鳥や魚がすめる用水にします。 - さまざまな利用
雪をすてやすくしたり、水をくみやすくします。また、散歩道や水を取り入れた公園をつくります。
昔の人たちが残してくれた大切な歴史的遺産(いさん)の用水を、これからもしっかり守っていきましょう。