金沢の文化の人づくり奨励金制度インタビュー(古池様)

長い掛け軸のような紙に黒の炭のような模様が入った加賀友禅を手に取り見ている古池 一弘氏の写真

伝習者: 古池 一弘 様 育成者: 毎田 仁嗣 様

加賀友禅の魅力発信

伝統ある加賀友禅に自分らしさをどのように表現していきたいですか。

縦じまのシャツと黒い上着を着てほほ笑む古池 一弘氏の写真

(古池さん) 僕は絵というのは、見て何かちょっと楽しければそれでいいというか、何か面白いと感じるものがあればいいと昔から考えていて、普段、ちょっと目に触れて気になった風景とか模様とか何でもそうですが、そういったものをちょっとメモしておいて、それを実際何か作るときに反映したいと常に考えています。個人的にはユーモアのあるものが好きで、ほっこりしたりとか、くすっと笑えるようなものを加賀友禅のデザインに盛り込んでいきたいと思っています。

加賀友禅は写実的な、本来の自然美をそのまま描くことが特色ですが、伝統は守りながら、現代に合ったような形で新たなチャレンジをしていくことについてはどう思われますか。

(古池さん) そうですね。先生(=毎田仁嗣さん)は、着物はもちろんですが、加賀友禅の図柄というものをよりモダンにアレンジしたりとか、内装やエプロンへの転用などいろいろな展開をされているので、そういった部分については、この工房に就職できてよかった点でもあり、勉強になるところでもあります。
(毎田さん) 彼は、ちょっと視点の違うようなところを持っているので、そういった面白いものをこれからもっともっと作っていってもらえると期待しています。デザインの担当も幾つかやってもらっていて、本当に面白い視点を持っていると思います。

加賀友禅は400年前から受け継がれてきましたが、最近はスカーフやのれんなどに活用の幅が広がり、日常的に加賀友禅が溶け込んでいるように思います。その魅力を、全国へどのように発信していきたいですか。

(古池さん) 加賀友禅の絵柄の魅力でいうと、西欧風のロジカルな感じとまた違って、写実とデザインを図案化する中の境界で、結構自由に表現できる部分があると思っています。そういった部分で面白さが伝わるように出していけたらと思っています。
 あと、実用物であり、鑑賞するものでもあるというのが、昔大学で日本画専攻だった自分からすると面白いと思っていて、そういうところに今後の可能性があると思っています。

金沢らしい制度

金沢市の文化の人づくり奨励金について、どのように考えていますか。

(毎田さん) 彼は、去年加賀友禅の新作協議会用に初めて帯を作りました。やはり全部一人で作って、それで結果を自分で見て、自分でこれからどうしたらいいか、また、他の人からも、こうしたらいいのではないかなどいろいろな意見を頂ける、いい機会だったと思います。
 今回作ったのは帯ですが、それを本当に締めてもらったり、どういう着物に合わせるかなど、そういったところでやっと一通りの一巡になるので、一巡することで自分の中で次の制作に対して力がついていくと思います。これからは繰り返しそういうこともやって力をつけながら頑張っていってもらえればなと思っています。
 そういう時に、うち(毎田染画工芸)で生地を用意してもいいのですが、そうするよりも自分で生地を買って、自分で道具をそろえることで、責任を持って物を作るということにつながります。そういった部分に金沢市からの奨励金もが活用されるのではないかと思います。
(古池さん) そうですね。奨励金制度に対しては、ありがたいということと、今後どういう形でかは分からないのですが、自分自身が仕事をしていく中で、いろいろな人に商品を手に取ってもらうことで還元していけたらと思っています。
 また、文化の人づくりのために寄附金を活用することについては、愛知県から来た自分からすると、金沢の文化を育てる仕組みで、ありがたいと同時に、「金沢らしい」いい制度だと思います。

自分のものづくりをスタートする

今後、金沢で加賀友禅作家として生きていくことの夢や抱負をお聞かせください

工房で白く長い紙に黒の模様を付けている古池 一弘氏の写真

(古池さん) 金沢のまちは、学生時代から数えて15年以上住んでいますので、第2のふるさとのように思っています。一度、名古屋に戻って1年間旅行業の仕事をしましたが、たまたま金沢に戻り、浅野川沿いの風景を見ているとほっとして、「ああ、美しいな」と素直に感じたこともあります。コンパクトだけれど、いろいろな要素が入っていて面白いまちだと思います。
その中で自分も、ものづくりで絡んでいきたいと思っています。今後どうなっていくか分かりませんが、とりあえず近々の目標としては、独立して自分の仕事、ポンコツでもいいから自分の看板で何とか世の中で仕事を形にしていきたいというのが今の思いです。自分で着物であるとか、ものづくりをスタートするところからだと思っています。
その先に、体験工房や、子どもの絵画教室なども昔から関心があるので、いつか開けたらという思いもありますが、まずはしっかりと作れるようになることです。
(毎田さん) 金沢市からの奨励金を活用しながら、作品展などへの出店など、年に幾つか目標を決めてやってもらいたいです。中長期の目標を持つというのも大事ですけれども、そこを一つ一つ刻んでいく短期の目標も大事だと思うので、1年間、自分は今年はこの展覧会に出すという目標を決め、それを目指して段階的に力をつけていってもらいたいと思っています。

毎田さんは、ご自分の加賀友禅への思いを、古池さんをはじめ、今後伝習者に対して、どのように伝えていきたいですか。

白い紙に黒の模様が入った加賀友禅の前で立って話をする毎田仁嗣氏の写真

毎田さん) 僕たちが作るものは使ってもらわないと駄目なのです。使ってもらうためには、やはり今の人たちが面白くないと使ってもらえないと思います。今の人たちが「これいいね」、「これ、かわいいね」、「これ、かっこいいね」ということで手にして買ってくれなかったら続いていかない。
 よく伝承、伝統ということを言われるのですが、伝承というのは、もともとの技術をそのままの形で受け継いでいくこと。伝統というのは、受け継いだ、その伝承した技術を使って、今なりのものですね、今の時代の自分の感性なりを入れて新しいものを作ること。結果、それが受け入れられて次の世代に続いていく。振り返ってみると、ずっと続いてきたけれども、その時代時代の風であったり、感性であったりを取り入れて変化しているからこそ続いていくという部分が大事だと思うのです。
 彼にも言っているのですが、基本的な技というのはしっかりと入れつつも、古典ものまねだったり、焼き直しだけでは駄目だということで、これからは、そういう意味で自分なりの個性だったりを取り入れて、本当に今の人たちが面白いと思うものを作っていってほしいと思っています。

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