旧田上家

指定保存建造物:旧田上家(きゅうたがみけ)

旧田上家の詳細
所在地 金沢市尾張町1丁目5番20号
指定保存建造物 平成9年4月10日指定/平成25年2月21日一部改正

田上家の建物は診療部分と住宅部分とにそれぞれ建物が分かれていますが、いずれも洋館造りです。設計者は坂本宇吉、施工は松井組(現松井建設)が担当し、住宅部分は昭和6年(1931年)に、診療部分は昭和7年(1932年)に建設されました。
住宅部分は、木造によるほぼ総2階建てで、内部はベランダをついた居間や食堂、寝室などが完全に独立した、純粋な洋風の平面配置がなされています。各室を構成する細部は圧巻で、京都から職人を呼んで仕上げたという寄せ木細工の床、壁、天井や家具調度品のデザインは見事です。例えば、居間にある幾何学的なパターンのスクリーン、ドアの花鳥、透し彫りの円形装飾、大理石のマントルピース、電話台や作り付け家具などをみると、美術品の部類に入れても良いと思われるほど精緻で美しいデザインがなされています。
外観は、1階に向かって右側に位置する玄関部にのみ壁を多く配し、それ以外は大きな開口部をほぼ全面にとる開放的なデザインをとっています。玄関回りの各部材はシャープな垂直線を強調し、柱とせり出した階段、深く切り込まれたポーチ、門灯の扱いなどの組み合わせはキュビスム風の構成意図が読み取れます。また、腰に張られたブルーと黄色のタイルの縞模様と階段踏面の白タイルのコントラストも鮮やかで美しく、さらに、すべての窓の窓枠を正方形のグリッドで構成し、玄関の腰窓や門灯にも細かいグリッドを付けています。このような正方形のグリッドを多用するデザインは、垂直線の強調と相まって、イギリスのモダニストとして著名だったマッキントッシュのデザイン手法を思わせる意匠です。ちなみにこの建物の施主は、ドイツ留学を終えて帰国後直ちにこれを建築し、ドイツでの見聞に基づいて細かな指示を設計者に与えたということから、当時ドイツで流行していたユーゲントシュテイルのデザインを反映しているといえます。

2階建ての白壁の外観と正方形の窓の洋風な旧田上家の外観写真

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