平木屋染物店
有形文化財 建造物
平木屋染物店(ひらぎやそめものてん)
所在地 | 金沢市片町2丁目31番38号 |
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市指定文化財 | 令和3年7月1日指定 |
平木屋染物店は、旧上伝馬町に位置し、藩政期から現在に至るまで染物業を営んできた金沢を代表する旧家のひとつであり、当家には御用札など、藩の御用達であったことを示す貴重な史料が残っています。平木家は旧石川郡松任の平木の出身で、平木屋は、紺屋を創業した弥助を初代とします。文化8年(1811年)の「金沢町絵図」には「紺屋弥助」とあり、野町の旧北国街道沿いに店を構えていたことが分かります。現在地である旧上伝馬町に移ったのは2代弥右衛門の頃と推測され、平木屋は江戸時代末期に一度火災に遭っており、現在の建物は、火災後に再建されたものと伝わります。
建物は木造2階建、切妻造平入の町家で、屋根は金属板葺きですが、勾配は緩く、平成6年頃までは板葺き石置き屋根でした。建物の背は低く、本市では低町家に分類されるもので、1階の庇は厚板を目板で押さえた板庇とし、2階軒構造は小屋梁の登り梁が軒桁を受けるもので、いずれの特徴も古い形式で、これらの特徴が併存している町家は市内では他に見られません。また1階正面柱間に蔀戸が残るなど、江戸時代末期から明治期にかけての古い建築様式がいくつも見られます。加えて、1階のショーウィンドウやガラス戸の出格子は、近代以降の町家の意匠的な変遷を表すもので、各時代の金澤町家の特徴が集約した建物と言えます。
内部においては、1階では、長尺の布を張るための幅の広いトオリニワが見られ、2階では型場と呼ばれる、布に型をあてて糊を塗り込むための作業場が残り、染物店という生業に適した町家の造りが見られます。また、当時の当主である3代弥平は茶人として知られており、2階の茶室「白蓮庵」では、椰子の木の床柱や網代天井など、数寄屋の意匠が用いられ、主人の好みが反映されています。
外観正面
トオリニワ