小坂神社本殿
有形文化財 建造物
小坂神社本殿
(こさかじんじゃほんでん)
所在地 | 金沢市山の上町42番1号 |
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市指定文化財 | 平成26年10月14日指定 |
小坂神社は、旧城下の北郊、山の上町に位置する古社であり、金沢五社のひとつとして広く知られています。社伝によれば、養老元年(717年)に鎮座し、中世には小坂荘(奈良春日大社領)の総社であったと考えられています。文明年間(1469~87年)の一揆により社殿を悉く焼失し、寛永13年(1636年)、郷民が現在の社地に社殿を再興したと伝えられています。現在の本殿は、その後の貞享5年(1688年)に再建されたことが、当社文書に記され、向拝の虹梁形頭貫、海老虹梁に見られる細部意匠には、その頃の様式が見られます。
神社建築は、奇数間が一般的ですが、当本殿は、四間社流造という珍しい形式です。また、向拝は四間とはせずに三間とし、向拝中央間のみに浜床と木階を設けています。現在の塗装の下には古い塗装が確認でき、当社文書より、宝永3年(1706年)に寄進された「チャン塗」である可能性があります。「チャン塗」とは松脂や胡麻油を調合した塗料で、18世紀初頭から全国に普及したと考えられており、全国的に見ても宝永年間が早い事例とされています。
以上のことから、小坂神社本殿は、市内で数少ない17世紀後期に遡る遺構として、年代判定の指標となる細部意匠を残すなど、本市における神社本殿建築として貴重な建造物といえます。

本殿