佐奇神社拝殿
有形文化財 建造物
佐奇神社拝殿(旧天徳院前田綱紀御霊堂)附棟札
所在地 | 金沢市佐奇森町ホ113番 宗教法人佐奇神社 |
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市指定文化財 | 平成27年2月12日指定 |
佐奇神社は、社伝によれば天平4年(732年)の創建とされ、旧社格は郷社です。
拝殿は、天徳院の境内にあった5代藩主綱紀の御霊堂を、明治9年(1876年)に移築したものです。明治7年に前田家が葬祭を仏式から神式に改めたことにより、御霊堂が売却されました。移築された後、明治39年(1906年)に曳家を行い、拝殿の向きを西面から南面に変え、今に至るまで若干の改築を行っています。しかし御霊堂建築当初から改築に至る図面や部材の痕跡が残っており、本来の姿をうかがい知ることができます。また、拝殿には鉛瓦が伝わっており、本来は鉛瓦葺きであった可能性があります。
御霊堂に付いていた棟札には、寛政元年(1789年)に加賀藩御大工頭(おんだいくがしら)清水次左衛門藤原峯光が建築したこと、綱紀の戒名である「徳翁一斉居士」が記されています。峯光はこの他に重要文化財である気多神社本殿などを建築しています。そのため、気多神社本殿と御霊堂は、細部の意匠が似通っています。
佐奇神社拝殿となっている御霊堂は、3間四方が多い霊廟建築としては大型で、3代将軍家光を祀る霊廟と同規模の5間四方です。また、全国的に見ても、18世紀以降に建てられた霊廟建築は希少であり、彩色を用いず彫刻のみによる装飾手法など、18世紀の霊廟建築の特徴をよく伝えており、近世に建てられた藩主の御霊堂として、市内に残る唯一のものです。

佐奇神社拝殿 外観
内陣正面
金具象嵌
彫刻による装飾