紙本墨画布袋図

有形文化財 美術工芸品:絵画
紙本墨画布袋図(しほんぼくがほていず)

紙本墨画布袋図の詳細
所在地 金沢市本多町3丁目2番29号 金沢市立中村記念美術館
市指定文化財 【市指定文化財】平成23年1月11日指定
上に漢文、下の方に布袋図が墨で書かれている紙本墨画布袋図の掛け軸の写真

画面縦75.3センチメートル×横30.7センチメートル、全体縦154.3センチメートル×横32.4センチメートルの紙本墨画の1幅です。
中国南宋代には、禅僧の賛を伴う罔両画(もうりょうが)様式(布袋や達磨などの禅宗人物をごく薄い墨で描く絵画の様式)の禅宗人物画が多く描かれました。それらは日本にも少なからず渡来し、現存するものは、直翁(じきおう)筆「六祖挟担図(りくそきょうたんず)」偃渓黄門(えんけいこうもん)賛(国宝・大東急記念文庫)、伝胡直夫(こちょくふ)筆「布袋図」偃渓黄門賛(重文・徳川美術館)などが著名です。この布袋図も、このような南宋代の禅宗人物画の秀作であり、加賀藩主前田家に伝来した由緒ある品です。
布袋図の作者は、落款が無く不明です。箱書によれば卒翁(そつおう)と伝えられますが、卒翁についても不明です。しかし、その確かな筆致から画家の優れた技量が窺える典型的な罔両画様式の作です。
賛の筆者痴絶道冲(1169~1250年)は、景徳寺、万寿寺など南宋五山の四ヶ寺の住持を務めた臨済宗の高僧です。賛の内容は「この布袋図が一見すると大らかに見えるが、容易には近寄りがたい、それを活の力で一念超越するとよい」というもので、禅宗美術の幽玄な境地が窺えます。制作年は「太白名山道冲」とあることから、作者が太白山景徳寺にいた淳祐4~5年(1244~45年)頃と推測されています。
この布袋図の伝来については、付属の懶斎(らいさい)書状に、室町時代に朝比奈駿河守が所持し、武田信玄もその存在を把握していたことが記されています。朝比奈駿河守とは、室町時代の武将で、武田信玄に属した朝比奈信置(のぶおき)(1528~1582年)とみられます。その後、いつの頃か加賀藩主前田家の所蔵となり、弘化2~3年(1845~46年)に編纂された『表御納戸御道具目録帳』(前田家蔵帳)に記載があります。
掛軸の表装に使われている上代紗(じょうだいしゃ)は、年代の古い唐絵や高僧の墨蹟などに限定される厳粛な雰囲気を持つ格の高い裂(きれ)です。また、掛軸は三重箱に収まり、特に内箱、中箱は入念に仕立てられ、梅花形の紐金具により前田家で誂えられたものとみられます。また、来歴を伝える文書資料もよく備わり、近世以前の伝来が伝わる少ない例として貴重です。
南宋代禅宗人物画の秀作として高い美術的価値があり、また茶道具としては、大名家の茶道における唐物重視の歴史を伝え、加賀藩主前田家ならではの茶道具収集の水準の高さを示しており、金沢に長く伝来した茶道具の名品として高い価値が認められます。

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