絹本著色釈迦三尊十六善神図
有形文化財 美術工芸品:絵画
絹本著色釈迦三尊十六善神図 (けんぽんちゃくしょくしゃかさんぞんじゅうろくぜんしんず)
所在地 | 金沢市観音町3丁目4番2号 醫王院(いおういん) |
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市指定文化財 | 平成29年6月29日指定 |
釈迦三尊十六善神図は、『大般若波羅密多経』(大般若経)にゆかりある仏菩薩(ぶつぼさつ)や護法善神を描く仏教絵画である。画面のほぼ中央に中尊として正面向きの釈迦如来坐像を大きく描き、向かって右側に脇侍(わきじ)の文殊菩薩、左側に普賢菩薩を、これら三尊を囲繞するように十六の護法善神を配し、画面下方右には玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)が、その対面には深沙大将(じんじゃだいしょう)が描かれている。
本図に描かれる各尊は、それぞれに着衣、頭髪、持物や姿態など、個性豊かな群像としてまとめられており、全体的に丸みを帯びて穏やかな印象である。特に細線を用いた髭や毛髪の表現は精緻で、各色の載せ方とあわせて細やかな配慮がなされており、制作者の技量がうかがえる。諸尊各々の表情や翻る幟旗(のぼりばた)、動きにより変化する衣類や甲類、姿態に応じた筋肉などを肥痩する墨線を駆使して生き生きと描き出しており、特に円光内部や各尊の着衣、表情等に用いられる暈(ぼかし)の技法は秀逸で、画像全体に写実の趣向とともに立体感と柔らかさを与えている。
全体的に褐色を帯びた本図の色調は、法要において幾度となく使用されたことを示しており、絹目の様態と併せて考慮すれば、本図は15世紀後半代のものと考えられる。伝存する十六善神図の多くは三尊を皆金色(かいこんじき)であらわすもので、本図のように中尊が赤い法衣を身に纏うものは、宋元や高麗など請来仏画の描法を継承した作風のものとして貴重である。緻密な描法による優れた仏画であり、伝来等は不明ながら、貴重な作例として取り上げられ、金沢市指定文化財として十分な価値を有するものである。

絹本著色釈迦三尊十六善神図