加賀纏製作

選定保存技術:加賀纏製作(かがまといせいさく)

加賀纏製作の詳細
保持者 坪野 進
選定保存技術 平成28年9月12日選定

 火消し道具の一つである纏は、江戸時代から現代に至るまで、消防のシンボルとしてよく知られている。起源を藩政期に持つ加賀纏も、今日、金沢市消防団の49分団全てが所持し、地域の防災を司る消防団活動の心意気を示す象徴である。また、纏持ちは、石川県指定無形民俗文化財の「加賀鳶梯子登り(かがとびはしごのぼり)」において、指揮者、演技者、梯子持ち、鳶口持ち(とびぐちもち)、木遣隊(きやりたい)と共に、梯子登り演技に欠かす事のできない構成要素の一つである。
 加賀纏の大きな特徴は、全分団の纏が梅花を象る同一形状の頭に記す分団名と、馬簾(ばれん)に残す二筋の黒地以外、総体を金箔で飾る仕様で統一されている点にあり、華麗な容姿を持つ纏の様式は全国的に類がない。近隣県や県内他市町でも、類似の金箔仕立ての纏を所有しているが、それらは加賀纏が伝播していったもので、同じ範疇にあると言える。
 保持者の坪野進氏は、昭和5年(1930年)金沢市大手町に生まれ、現在も同所で纏製作に従っている。纏の製作に入り50年以上のキャリアを有し、その技の基本は先代から継承したところが大きいが、独自の創意と工夫による点も多い。坪野家は、江戸時代より代々「鑓屋庄兵衛(やりやしょうべえ)」を名乗って材木町に店を構え、槍の柄(つか)などの製作を家業とした。近代以降も大正期頃まで同所で纏を手掛け、進氏は12代目に当たると思われ、先々代以降に纏製作を専らとするようになり、現在に至る。
 現在、金沢市消防団各分団の所持する加賀纏は、全て統一的な形姿をもって製作されており、総高約2.8メートル、重さ約7キログラムで、その構造は大きくは頭、馬簾、馬簾台、棒(柄)の部分からなり、1基の製作には約1カ月が見込まれる。
 坪野氏には、他県からも多様な製作や修理依頼がある。それは、全国的にも稀有な専業者であると同時に、技の確かさ、完成度の高さへの評価に因るものである。
 このように、氏の加賀纏製作は、石川県指定無形民俗文化財「加賀鳶梯子登り」演技、ならびに金沢の歴史文化や市民の生活感情に密接に関わる当地の地域文化に無くてはならない技術であり、金沢市選定保存技術として選定するに十分な価値と意義を有している。

作業台の上で金色の大きな加賀纏を製作する男性の写真

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