形容詞編
金沢の方言 形容詞編
形容詞には、その土地の風土や風習の在り方に深く影響されるといわれます。
そうした観点から、金沢特有の形容詞をみてみましょう。
「理屈なぁ~(りくつなぁ)」は褒め言葉
りくつな(物事/仕組みがうまく出来ている。もっともな話だ)
金沢は、前田家五代目綱紀(つなのり)の時代に「加賀は天下の書府」と言われたように、学問を尊重し、また工芸都市としての性格から技術を持った人への敬意を持っていました。
こうした文化的背景が、論理的な考え方や物事が巧みに組み立てられている事に対しての賞賛である、「理屈なぁ」という言葉に表われているのではないでしょうか。
ちなみにこの言葉には、単につじつまを合わせている事を表わす「へ理屈」のような、批判的な意味は含まれていません。
音声を聴く(理屈なぁ~)
例文
「この機械、よぅーできとるがいね。りくつなぁ。
(この機械、よくできているね。すごいなぁ。)
量の大小
- でかいこと/たぁあんと(量的にたくさんの)
「でかいこと」は、『大きさが大きい』という意味ではなく、『量が多い』という場合に使われます。
「たぁあんと」も同じですが、その発音は金沢らしく、“た”の後を長く延ばします。 - ちょっこし/ちょっこり(量的に少しの)
これは反対に「すこし・すこしだけ」という意味で使われます。 - たった/まんで(ものすごく)
これらの単語は、「でかいこと」等をさらに強調し、『程度がはなはだしい』ことを表わす時に使われます。
「たった」共通語では「たったこれだけ」というように、数が少ないのを強調する言葉ですが金沢では逆の場合に使われる例です。
音声を聴く(まんででかいこと)
例文
「一晩でまんででかいこと、雪降ったわいねー」
(一晩で、ものすごく沢山の雪が降りましたね)
味付け
くどい(塩からい)
通常、味が濃い場合に「くどい」と言いますが、金沢では「塩辛い」場合にも「くどい」を使います。
音声を聴く(くどい)
例文
「この塩鮭、くどいげんて。」(この塩鮭、塩辛すぎるよ)
しょうもない(味が薄い、みずっぽい)
逆に、味が薄かったり、水っぽかったりした場合には、「しょうもない・しょもない」が使われます。
音声を聴く(しょもない)
例文
「この味噌汁、なんかしょもないじー。」
(この味噌汁、なんか味が薄いですよね)
子供
ちーんと(おとなしく)
金沢では、はしゃぎまわる子供をしかる際には、よく「走りまわっとらんと、ちーんとしとりまっしね!」と言います。「ちーんと」は「おとなしく(座っている)」という状態を表わします。
音声を聴く(ちーんと)
例文
「走りまわっとらんと、ちーんとしとりまっしね!」
(走り回っていないで、おとなしくしてなさい!)
かたい(かしこい)
逆に、ちゃんとおとなしくしている賢い子供は、「あの子はかたい子だ」と褒められます。
わらびしい(子供っぽい、おとなげない)
さらにもはや子供と言えないような年齢になっても、大人げない人を指して「わらびしい」と形容します。
その他
- いんぎらぁっと(ゆっくりと・ゆったりと )
- あせくらしい(せかせかしている)
- いじっかしい(わずらわしい、うるさい)
- けなるい(うらやましい)
- へしない(まちきれない)
- いさどい・いさどくらしい(立派な、自慢げな)
- はしかい(かゆい、子供などがませている)
- じゃまない(大丈夫だ)
- たいそい(疲れた)
- だやい(疲れた、だるい)
- にんがしい(にぎやかだ)