金沢市冬期バリアフリー計画 2-1

2-1 冬期バリアフリーの必要性

1. 雪国の役割と恩恵

冬期において太平洋側が安定した気候であるのは、雪国が防波堤の役目を果たしているためであり、その他、雪国は、国土の水資源の涵養、電力供給や豊かな食材の供給源として、大きな役割を果たしている。また、雪国独自の自然景観、生活文化や伝統技術においても、我が国の多様な文化の形成に寄与している。

冬期は、日本海からの湿った空気が日本の中央に位置する高い山脈により遮られるため、日本海側の地域では曇り空や雪の日が極めて多い。このため、太平洋側の地域は雪の少ない安定した気候に恵まれ、首都圏をはじめとする太平洋側の地域の経済活動がたいへん容易となっている。

日本海側に雪が降る仕組みを表した図

図 日本海側に雪が降る仕組み

しかしながら、気象条件の厳しい雪国は、雪によるデメリットがある反面、雪解け水が豊かな水源を供給してくれるというメリットを持っており、国土の水資源の涵養や太平洋側に対する電力や食料の供給源として大きな役割を果たしている。また、春夏秋冬がはっきりしており、独自の自然景観、食材、生活文化や技術を有しており、我が国の社会生活や独自文化の創出の点からも、雪国はなくてはならない存在であるといえる。近年では、克雪から利活用へと雪との新しい関係を構築しようとする動きも活発で、「金沢ルネッサンス冬まつり」や「フードピア金沢」等、地域の伝統や資源を生かしながら新たな文化を発信する冬期イベントが催されている。

木の中央に建てられた柱から傘状に沢山の縄が伸ばされた兼六園の雪吊りと美しい雪景色の写真

兼六園の雪吊り

雪が薄っすらと道路に降り積もっている古い木造の2階建ての建物が並んでいるひがし茶屋街の写真

ひがし茶屋街

(注意)雪吊りとは、北陸特有の湿気を多く含んだ重い雪から木々を守るために樹木に支柱を立てたり、縄で枝を吊ったりすること。冬の金沢の風物詩

お椀にシイタケや鴨肉、季節の野菜が盛り付けられた治部煮の写真

治部煮

大鍋に沢山入った治部煮のふるまいが行われており、市民の方々がお椀に入った治部煮を笑顔で食べている写真

フードピア金沢

(注意)冬の渡り鳥である鴨に小麦粉をまぶして季節の野菜や麩などと一緒に煮込んだ金沢の郷土料理

2. 冬期バリアフリーの必要性

冬期は市民の外出頻度が低下するとともに、転倒事故等も増加し、市民が安全で快適な生活を営む上で支障となっている。また、冬期の除雪や歩行者環境に対する県民の関心も高い。
このため、歩けるまちづくりを推進する金沢市においては、人が多く集まる中心市街地、主要交通結節点、公共施設周辺等、特に安全で快適な歩行空間の確保が必要な箇所では、消雪施設や除雪の充実、沿道建築物との連携などの対策を総合的に推進し、「冬期における歩けるまちづくり(歩行空間のネットワーク)」を構築する必要がある。

1. 高齢者や身体に障害のある人の外出頻度の減少

積雪時の外出頻度調査(H5金沢市)によると、身体に障害のある人の約85%、高齢者の約65%の人が「外出頻度が減少する」と回答しており、健常者の約40%に比べると、冬期では、身体に障害のある人や高齢者が積雪のため外出に制約を受けているといえる。

積雪時における対象者別の外出頻度変化の横棒グラフ

図 積雪時における対象者別の外出頻度変化

積雪時における買物目的交通手段別の外出頻度変化の横棒グラフ

 

図 積雪時における買物目的交通手段別の外出頻度変化

2. 積雪や凍結による転倒事故

国の推計によると、平成26年(2014年)には日本の高齢化率は25%を越え、国民の4人に1人以上が65歳以上の高齢者という超高齢社会が到来すると見込まれている。加齢にともなって平地歩行や階段昇降能力は急激に低下することから、凍結路面や雪で凸凹になった路面の歩行は非常に困難であり、転倒による骨折が寝たきりへとつながる可能性も大きい。また、健常者にとっても、積雪による歩道の幅員減少や転倒など、冬期特有のバリアが存在するため、市民の日常生活に大きな影響を与えている。

表 雪道による歩行者転倒事故出動件数調べ
(12月1日〜2月末日)(資料:金沢市消防本部)
  平成11年度 平成12年度
広坂救急分隊 19件 9件
高尾台救急分隊 5件 0件
神田救急分隊 10件 9件
泉野救急分隊 9件 9件
駅西救急分隊 11件 0件
鳴和救急分隊 3件 11件
森本救急分隊 3件 1件
金石救急分隊 6件 2件
合計 66件 41件

3. 不満の高い除雪体制

平成13年に行った石川県の道路整備に対するアンケートによると、不満度が高かったものとして、「交通渋滞に対する対応」や「歩行者や自転車の安全性の確保」の次に、「冬期の除雪体制や融雪装置の整備」が挙がっている。このことからも、県民が「歩行者環境」や「道路除雪・融雪」に対して、対策を強く望んでいることがわかる。

石川県の道路整備に対して不満度の高かった項目の横棒グラフ

図 石川県の道路整備に対して不満度の高かった項目(上位5項目)

(資料:いしかわのみちづくり1万人アンケート)

4. 道路に関する歩行者の不満

平成14年に国土交通省北陸地方整備局が石川県民に行った「日常ご利用の道路に関するアンケート 石川県版」によると、歩行者の項目別満足度では、「冬期の歩行」に関する不満が最も高くなっており、次いで不満が高かったのが「高齢者や障害者の方々にとっての歩きやすい道路」となっている。 「冬期の歩行」の不満要因としては、「除雪や除雪した雪の処理が不十分」が最も高くなっており、降雪時における雪の処理への対応が求められている。このことから、歩行者の視点からも冬期の対策やバリアフリー対策が強く望まれていることがわかる。

歩行者の道路に関する満足度の横棒グラフ

図 歩行者の道路に関する満足度(上位5項目)

「冬期の歩行」に関する不満点の横棒グラフ

図 「冬期の歩行」に関する不満点(複数回答)
(資料:道路の満足度(CS)調査 石川県版)
注意:平成14年3月アンケート(回収数:石川県内の居住者407)

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