地盤沈下対策
地下水と地盤沈下
金沢の地下水
金沢は、雨や雪など降水量がきわめて多いところです。この降り注いだ水は、緑豊かな山々に貯えられ、長い時間をかけて地下に浸透し、豊かな地下水脈を育んでいます。なかでも、JR北陸本線以西の平野部では、手取川の伏流水も補給されるため、より豊富な地下水に恵まれています。
地下水は、段丘の崖などでわき水となり、平野部でも人力の掘り抜きで湧き出した井戸が数多くあり、それぞれ生活用水や灌漑用水として利用されてきました。また、地表に戻った水は用水のせせらぎとなってまちの風情を醸し出してきました。さらに、きれいでミネラル分を多く含んだおいしい地下水は、古くから酒や醤油の醸造、和菓子や麩の製造などに使用され、また明治以降に発展した繊維産業にも大きく貢献してきました。
しかし、地下水量の減少や水質の悪化、上水道の普及などにより、飲用に井戸水を利用することは少なくなってきました。また、工場の廃業や郊外への移転等により工業用の地下水利用も減少してきています。これらに代わって、近年、道路消雪に使用される地下水使用が増加し、この影響を受けて、一部地域では地盤沈下が生じています。
地盤沈下のメカニズムについて
地盤沈下は、冬季に消雪用の地下水を一時的に大量に汲み上げることにより、帯水層の上下にある粘土層の中の地下水が絞り出されて、粘土層が収縮し地表面が低下する現象です。
地下水位については、地下水の汲み上げにより一時的に急激に低下しますが、時間の経過と共に元の水位まで回復します。しかし、粘土層については一旦収縮すると元に戻りにくい性質があるため、なかなか回復せず地盤沈下が進行していきます。
地盤沈下がこのまま進行していくと、高潮や豪雨などによる浸水被害、建物の傾きや抜け上がり、水道管等埋設管の破損など様々な障害が起きる可能性があります。
(注意)地盤沈下のメカニズムについては下記のファイルを参照してください。
地盤沈下のメカニズムについて (JPEG: 553.1KB)
地下水の適正な利用について
金沢市では、地盤沈下が深刻化することを未然に防止し、貴重な資源である地下水を将来にわたって有効に活用していくための対策を検討するため、平成16年8月に「金沢市地下水適正利用検討委員会」を設置し、平成18年2月に「地下水の適正な利用について−現状の総括と提言−」を取りまとめました。
金沢市における地下水の適正な利用及び保全に関する条例について
上記の提言を踏まえ、地下水を保全し地盤沈下を未然に防止するため平成21年4月1日から「金沢市における地下水の適正な利用及び保全に関する条例」が施行され、一定規模以上の揚水機を持つ井戸を設置する場合には、井戸設置許可申請書を提出し、市長の許可が必要となり、消雪用井戸の設置は原則として設置できなくなりました。
また、井戸の設置許可を受け、地下水の採取を開始した場合は、地下水採取届出書の提出が必要になります。
さらに、地下水採取者は、年度毎に年間採取量について、当該年度終了後1ヶ月以内に金沢市に報告しなければなりません。
(注意)用途により石川県へ届出が必要となる場合もあります(書類の提出先は金沢市環境政策課です)。詳細は下記のリンクからご覧ください。
金沢市における地下水の適正な利用及び保全に関する条例 (PDFファイル: 113.3KB)
地盤沈下対策重点区域等について
平成23年度に地盤沈下の著しい地域への地下水の流れを把握するため「地下水流向調査」を実施し、その結果に基づき、平成24年4月より、特に地盤沈下が継続している地域とその地域に地下水を供給している流域を「地盤沈下対策重点区域」として設定しました。その区域内にある消雪井戸使用事業場へ訪問し、節水要請等を含めた地下水使用削減策を優先的に実施するとともに、市民への啓発などに努めています。
地盤沈下対策重点区域の設定について(平成24年2月環境審議会資料) (PDFファイル: 4.2MB)
地下水の適正利用について (PDFファイル: 666.5KB)
金沢市地下水保全計画について
金沢市地下水保全計画(第3期)を策定しました
地下水保全計画は、地下水保全条例に基づき、本市の良好で持続可能な都市環境を形成していくため、貴重な資源である地下水を保全するための施策を実施することを目的として策定しています。
金沢市では、平成21年9月に「金沢市地下水保全計画」を策定し、その取り組みの進捗状況から見直しを行いながら、地下水の適正な利用、地下水のかん養、その他地下水の保全に係る取り組みに努めてきました。
消雪用井戸の節水等に努めてきたことで地下水位は安定傾向にありますが、冬季には平成29年度の大雪を筆頭に、雪の影響などによる地下水位の急激な低下が見られました。
地下水揚水量や地盤沈下に関する広範囲での詳細な解析、道路を中心としたより効率的な消雪用地下水揚水量の削減対策、地下水かん養の一層の推進等を進めていくことが、地盤沈下を抑制していくために重要であると考え、平成26年9月に策定した「金沢市地下水保全計画(第2期)」を見直し、令和元年11月に「金沢市地下水保全計画(第3期)」を策定しました。
金沢市地下水保全計画(第3期) (PDFファイル: 3.7MB)
地盤沈下の進行を抑制するために
様々な地盤沈下の対策を進めていますが、一部地域ではいまだに地盤沈下が継続して進行しているのが現状です。地盤沈下を抑制するためには、市民の皆様のご理解とご協力が不可欠です。
地下水は公共性の高い財産であることを再認識し、その保全について理解と関心を深めると共に、地下水の保全及びかん養に努めましょう。