昆虫はかせ富沢先生からのコメント

黄緑色の帽子を被ったはかせの形をしたマーク

今回の調査結果について、昆虫はかせの富沢先生からコメントをいただきました。
みなさんの調査からどんなことがわかるのでしょうか。

都市部で見られるセミの変化

金沢市の玉川公園のような都市部の小さな公園では、アブラゼミがほとんどで、ほかにはニイニイゼミが時々見られる程度です。同じ都市部でも、金沢城公園のような木の多い広い公園では、ほかにツクツクボウシやミンミンゼミが加わりますが、アブラゼミがほとんどであることには変わりません。
これは北陸地方の都市部全体にいえることであり、金沢市の過去3回の調査でも同様です。
このことは、ここ30年間、金沢市の都市部の環境に大きな変化がないことを示しています。
一方、卯辰山や野田山のような里山では、上記の都市部のセミ以外にヒグラシやチッチゼミが加わります。
このように、木が多く、広い場所ほど多くの種類のセミがすんでいて、数も多くなります。

ところが同じ都市部でも、東京や東北ではアブラゼミが少なく、ミンミンゼミが多い場所がたくさんあります。
また関西では、アブラゼミが減り、クマゼミが増えてきた地域があります。
これらの原因はよくわかっていませんが、都市部の地形や植栽木の変化、土壌の乾湿や日照が影響していると考えられています。

金沢市内でも、今後、自然環境が変わったり、温度や湿度の気候条件に変化があれば、セミの種類や個体数に少しずつ変化があるかもしれませんので、継続して調査する必要があります。

少なかったニイニイゼミ

今年の調査では、どの環境でもニイニイゼミのぬけがらが少なかったようです。
ニイニイゼミが、今年減少した確かな理由はわかりませんが、次のようなことが考えられます。
ひとつは、年次変動で、今年はたまたま発生数が少ない年であった可能性があります。
もうひとつは、幼虫が地中にいた期間に土壌が乾燥気味だったため、他のセミよりも乾燥に弱いニイニイゼミの幼虫が多く死んでしまった可能性があります。
今後、ニイニイゼミの数がどのように変化するのか、注目したいと思います。

クマゼミが定着

金沢市では、1984年頃から都市部の数箇所で、クマゼミの鳴き声が時々聞こえるようになりました。
その頃は、毎年同じ場所で鳴き声が聞こえていたわけではないので、定着しているとはいえませんでしたが、県庁周辺では、2003年から毎年鳴き声が聞こえるので、定着したといえるでしょう。
これらのクマゼミは、南方から移植された木の根っこの土にいた幼虫が羽化したものと考えられます。
県庁周辺のクマゼミは、2003年に移植された樹木から多くの個体が羽化し、世代を繰り返しているのでしょう。

むずかしい幼虫の同定

みなさんは幼虫の同定に自信がありますか。
今回の調査では、ミンミンゼミやヒグラシのぬけがらが校庭や人家の庭、街路樹でかなり報告がありますが、このような環境には、これら2種のセミはほとんど発生しません。
おそらく、ミンミンゼミのぬけがらはアブラゼミの間違い、ヒグラシのぬけがらはツクツクボウシの間違いの可能性があります。
どちらも触角の違いで判断できるのですが、専門家でも間違えやすいので、じっくり観察してみてください。

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