日本遺産 金沢の構成文化財
荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落~
北前船の活躍と男たちの夢
北前船は、日本海・北海道と瀬戸内・大阪を結ぶ航路で江戸時代の中ごろから明治30年代にかけて活躍した帆船のことです。預かった積み荷を運搬するだけではなく、船主自らが商品を買い付け、目的港や寄港地でそれらを売買して利益を上げていたのが特徴で、船主は1回の航海で莫大な利益を上げていましたが、反面、大きな危険を伴う困難な航海でもあったようです。
危険な荒波を命がけで越え、自らの才覚と努力で大きな商機をつかむ--海の男たちの描いた「夢」を紡いだまちが、日本海から瀬戸内海にかけての沿岸部に点在しています。城下町・金沢には、男たちの遺した数多くの歴史遺産が、彼らの夢とともに今も残り、伝えられているのです。
金沢市の構成文化財
「日本遺産 金沢探訪マップ」及び「金澤湊町石造物探訪マップ」は下記のリンクよりダウンロードしてください。
1.専長寺松帆榭
せんちょうじしょうはんしゃ
- 金沢市指定文化財(建造物)
- 金沢市金石味噌屋町6-37 専長寺
- 見学の際には事前連絡必要 電話番号:076-267-1574
専長寺松帆榭
専長寺は金石味噌屋町にある真宗大谷派の寺院です。創建は寛正6年(1465年)で、寺号は蓮如により文明4年(1472年)に名付けられました。現在の本堂は寛政9年(1797年)の再建です。松帆榭は本堂北側の土蔵に隣接して建つ茶室で、金石御塩蔵町にあった北前船の豪商・銭屋五兵衛の隠居所の茶室を移築したものと伝えられています。
2.本龍寺鐘楼
ほんりゅうじしょうろう
- 金沢市指定文化財(建造物)
- 金沢市金石下本町1-23 本龍寺
- 見学の際には事前連絡必要 電話番号:076-267-1568
本龍寺鐘楼
本龍寺は金石下本町にある真宗大谷派の寺院です。鐘楼はいわゆる鐘撞き堂のことで、境内の北東すみにあり、通りからもその姿を見ることができます。赤戸室石の端正な基壇の上に建ち、各所に美しい彫刻を見ることができます。江戸時代末期に活躍した船主・川端嘉左衛門の寄付によって建てられたものです。
3.金石こまちなみ保存区域
かないわこまちなみほぞんくいき
- 金沢市こまちなみ保存条例
- 金沢市金沢西1丁目、2丁目地内
金石こまちなみ保存区域
金石は犀川河口の右岸にあって日本海に面する港町です。古くより海上交通の重要地であり、江戸時代には北前船の往来により様々な物資が集まる加賀藩の交易の中心地として繁栄しました。通りには下見板張りの町家が建ち並び、どことなく懐かしさを感じる港町のまちなみが広がっています。
4.観田家住宅 主屋・西塀・西蔵
かんだけじゅうたく しゅおく・にしべい・にしぐら
- 国登録有形文化財・市指定保存建造物
- 金沢市金石西2丁目12-3
- 内部非公開
観田家住宅
観田家住宅は金石の中心部にある町家住宅です。明治3年(1870年)建築の数寄屋造りの建物は廻船問屋の湊屋左太郎の屋敷と伝わっており、各所に質の高い意匠を見ることができます。主屋の玄関脇の腰板や西塀の横板には船の部材を用いるなど、北前船で富を築いた商家らしい特徴的な佇まいは、港町金石を代表する建築物の一つといえます。
5.大野町こまちなみ保存区域
おおのまちこまちなみほぞんくいき
- 金沢市こまちなみ保存条例
- 大野町地内
大野町こまちなみ保存区域
大野町は金沢港の入口にあって日本海に面する港町です。古くは北前船の要所として栄えました。町内には北前船寄港地として発展した往時の面影を色濃く残すまちなみが広がっています。現在では醤油や味噌などの醸造業が盛んに行われ、蔵を改装したカフェなどでは醤油や味噌を使った料理やスイーツなどが楽しめます。
6.粟崎八幡神社奉納絵馬額面
あわがさきはちまんじんじゃほうのうえまがくめん
- 金沢市指定文化財(有形民俗文化財)
- 金沢市粟崎町ヘ49 粟崎八幡神社
- 非公開(特別公開あり) 電話番号:076-238-3024
粟崎八幡神社奉納絵馬額面 船絵馬
粟崎町の粟崎八幡神社には、船の新造祝いや航海の安全・無事帰港を神に感謝して船主や廻船問屋たちが奉納した船絵馬が数多く保管されています。これらのほとんどは旧暦8月の秋季例祭に合わせて奉納されたものと考えられます。このうち7面は北前船の豪商・木谷(木屋)藤右衛門一族が文化・文久年間(1804年~1863年)にかけて奉納したもので、画質・保存状態ともに優れ、江戸後期から幕末にかけての豪商の威勢が忍ばれる逸品です。
7.銭屋五兵衛家年々留附留帳
ぜにやごへえけねんねんどめつけたりとめちょう
- 石川県指定文化財(古文書)
- 金沢市金石本町ロ55 石川県銭屋五兵衛記念館
- 不定期公開(展示日程はご確認ください) 電話番号:076-267-7744
銭屋五兵衛家年々留附留帳
銭屋五兵衛は江戸後期から幕末にかけて活躍した北前船の豪商で、「銭五」の略称でも親しまれています。この古文書は銭屋五兵衛家の盛時の動向を書きとどめた帳面で、年々留は文政11年(1828年)から嘉永5年(1852年)まで、ほとんどが銭屋五兵衛自身の筆によるものです。本史料は現存するほぼ唯一の基本史料であり、銭屋五兵衛を知ることのできる貴重な資料となっています。銭屋五兵衛の波瀾万丈の生涯を紹介する石川県銭屋五兵衛記念館で保管・展示されています。
8.大野湊神社関係資料(大絵馬)
おおのみなとじんじゃかんけいしりょう(おおえま)
- 金沢市指定文化財(歴史資料)
- 寺中町ハ163 大野湊神社
- 見学の際には事前連絡必要 電話番号:076-267-0522
大野湊神社関係資料 大絵馬(部分)
大野湊神社は加賀宮腰の氏神を祀る古社で、裕福な町人層の氏子衆に支えられ、さらに加賀藩の庇護も受けていました。大絵馬は絵師松波景栄の筆によるもので、安政2年(1855年)に氏子町人らにより奉納されたものです。画面には幕末期の宮腰町の繁栄がいきいきと描写されています。また、境内には船主や船員たちが奉納した灯籠や狛犬などが遺されています。
9.中山家関係資料
なかやまけかんけいしりょう
- 石川県指定文化財(歴史資料)
- 金沢市玉川町2-20 金沢市立玉川図書館近世史料館
- マイクロフィルム閲覧可 電話番号:076-221-4750
- 休館:月曜日、年末年始、特別整理期間
中山家関係資料
この古文書群は、宮腰町の町年寄役・中山主計家に伝来したもので、近世史料5,152点と近代史料2,025点からなります。中山家は江戸時代の宮腰町年寄役を代々世襲した商家で、加賀藩との交流や町年寄としての町方経営・港湾運営などの公的なものから中山家の由緒や家系、交誼や嗜好などの私的な内容のものまで幅広く残っています。
10.紙本著色蓮湖真景之図
しほんちゃくしょくれんこしんけいのず
- 金沢市指定文化財(絵画)
- 個人蔵
紙本著色蓮湖真景之図
文久元年(1861年)に佐々木泉玄が描いた2巻の絵巻物で、大野川を中心に当時の沿岸の村々を写実性豊かに描いています。大野町周辺の地理や生活を今に伝える貴重な文化財です。