(国指定)中屋サワ遺跡出土品

有形文化財 美術工芸品:指定文化財
石川県中屋サワ(なかやさわ)遺跡出土品

中屋サワ遺跡出土品の詳細
出土 金沢市中屋サワ遺跡
所在地 金沢市上安原南60番地 金沢市埋蔵文化財センター
重要文化財 平成26年8月21日指定
員数 710点

中屋サワ遺跡は、金沢市の西南部、中屋町と福増町にまたがる沖積平野の微高地に立地し、周辺には縄文時代前期の上安原遺跡、中期の北塚遺跡や古府遺跡、後期・晩期のチカモリ遺跡や御経塚遺跡(両者とも国史跡)など、石川県を代表する縄文時代の遺跡が分布しています。
遺跡の発掘調査は、「いなほ工業団地造成事業」に先立ち、平成13年から16年にかけて、延べ約21,100平方メートルにわたり実施しました。その結果、遺跡は縄文時代晩期前半を中心とする縄文時代後・晩期の集落跡と河川跡や、弥生時代から室町時代までの集落が発見されました。弥生時代には地域の核となる環濠集落が形成され、奈良・平安時代には東大寺領横江荘遺跡との関連が想定されるなど、歴史的に重要な地域であったことが判明しました。
縄文時代の集落は、後期後半(八日市新保式期)から晩期後半(長竹式期)にかけて営まれ、出土土器量の多い晩期前半(中屋式期)に集落は発展します。遺物は、集落の近くを流れていた河川跡(SD40)から多量に出土しました。ここからは多数の木材を使って構築した作業場や木の実のアク抜き処理に使われた土坑群が発見されており、当時の人々の水辺における生業活動を示すものと考えられています。この河川跡から出土した遺物は、水分を多く含む土で密閉されていたために良好な保存状態を保っています。
今回指定対象とされた出土品は、木器・木製品41点、漆塗木製品33点、土器・土製品374点、石器・石製品258点、骨角器4点の合計710点です。
本出土品の大きな特色として、川跡から出土した豊富な木器・木製品や漆塗木製品があります。
木器・木製品には多数の白木弓、鉢や浅鉢、槽(そう)などの容器、樹皮製曲物などがあり、これらの製品には木材の加工や樹皮による緊縛など、高度な工芸技術がうかがえます。
漆塗木製品は、籃胎(らんたい)や木胎(もくたい)の漆器鉢などがあり、中でも籃胎漆器は編組(へんそ)技術と漆工技術とを高度に組み合わせた製品で、ほぼ完形の個体を含み、保存状態もきわめて良いものです。狩猟具では、装飾を施した漆塗りの飾り弓が多数出土しています。これは、弓本体の握りの部分に細い糸を丹念に幾重にも巻き、幾何学模様を編みだして、赤漆を塗って仕上げたもので、側面には樋も設けられていて、その技巧的な装飾には目を見張るものがあります。装身具にも、漆塗りの結歯式竪櫛(けっししきたてぐし)や腕輪、簪(かんざし)など、見るべきものが多く、本遺跡における漆工芸の盛行を良く示しています。
土器・土製品のうち、土器は深鉢・鉢・浅鉢・壺・注口土器・蓋などがあり、総じて遺存状態が良く、全形を復元できる個体も多くあります。文様には、磨消(すりけし)縄文を主とする曲線的文様が多用され、在地の文様モチーフの他に、羊歯状文(しだじょうもん)や工字文(こうじもん)など、東北地方の土器型式に多用される文様もみられ、他地域との密接な交流もうかがえます。
石器・石製品では、石鏃・玉・石冠・石棒・石刀などが出土しています。玉の素材には硬玉が用いられているものが多く、骨角器は少ないですが、ヤスなどの刺突具がみられます。
以上のように、中屋サワ遺跡出土品は、木製品や漆塗木製品が質・量共に優れていることに加え、縄文時代後・晩期の各型式の土器と、石器・石製品など多彩な日常用具の組み合わせも良好で、北陸地方の縄文時代における、生業活動の実態を復元するうえで、きわめて学術的価値の高い資料といえます。
なお、指定物件は金沢市埋蔵文化財センターで保管されており、その一部が金沢縄文ワールドで展示されています。

桶のような形をした、ふちの部分が欠けている籃胎漆器、中央で二つに割れている腕輪、2つのかんざしの写真

籃胎漆器、腕輪など

大小様々な長さで先端部分が鋭く尖っている白木弓と飾り弓の写真

白木弓、飾り弓

かけらをつぎはぎして復元された土器や所々かけている壺や皿などの土器の写真

土器

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