一口メモ2010
一口メモ 「セミはかせ」の徳本さんがみなさんの なぜ?ふしぎ?にお答えします!!
質問
質問1.昨年は7月にたくさん見つけたのに、今年は全くありませんでした
回答
はかせの答え
この頃よく問題になるように、環境が悪くなったため減少するという場合もあります。
その一方で雪の降る量が年によって違うように、生き物の発生数も年によって変わることは普通にみられます。
生き物には何年かの間隔をあけて増えたり減ったりをくりかえすという現象もしばしばみられます。
日本のセミでも関西でクマゼミが4年間隔で多く発生する年があり、8年間隔で特に多く発生する年がくることが近年知られてきました。他のセミでも似たようなことがあるようだといいますが、くわしいことはまだわかっていません。
今後も金沢のセミのぬけがら調査の詳しいデータの記録を何年も続けて調べていけば、新しい発見があるかもしれません。
質問
質問2.セミは鳴いているのに、ぬけがらは少なかった
回答
はかせの答え
鳴き声は聞こえるけれど、ぬけがらが少なかったとか見つからなかった…ということはよくあります。それは、鳴き声とぬけがらには大きな違いがあるからです。
ぬけがらはその近くに行かなければ見つからないけれど、鳴き声はセミが見えない場所にいても空気を伝わって遠くまで届くという違いによるものです。また、ぬけがらは低い位置にあって、枝や葉などに邪魔されて見えなかったりすることも多いです。
そして、成虫は新しい生息場所を見つけて生息する場所を広げようとする性質が強いので、ぬけがらからずいぶん離れた場所まで飛んでいくことがよくあります。
そのため、鳴き声がする近くをいくら探しても、ぬけがらは見つからないということが多いのです。
質問
質問3.後半ではアブラゼミのぬけがらが多くなり、ニイニイゼミが少なくなった。
回答
はかせの答え
これは、同じ夏に現れるセミといっても、セミの成虫が出始める時期がセミの種類によって少しずつ違うからです。調査結果のなかに、セミの初鳴き日の記録が載っているので、それを見てください。
初鳴きの日はニイニイゼミのほうがアブラゼミより早いということですから、ぬけがらが見つかる日もニイニイゼミのほうが早くなるわけです。
セミの初鳴き日については、下記リンクの「セミの初鳴き」箇所をご覧ください。
質問
質問4.前半の調査はオスのほうが多かったが、後半はメスが多かった。
回答
はかせの答え
ぬけがら調査期間の前半にはオスが、後半にはメスが多かったということは、オス幼虫がメス幼虫より早く地表に出るからです。そして、このような現象は昆虫ではどの種類でも広くみられます。
1995年に行われた金沢市の第一回のセミのぬけがら調査の報告書には、ある方が小立野にあるひとつのお寺境内で7月30日から9月17日にわたって日曜日ごとにアブラゼミのぬけがらを採集し、2,185個体のオスメスを調べたグラフが残っています。これには、オスがメスより先に出現する様子が見事に示されています。
質問
質問5.セミは高い所にいるのに、ぬけがらは地面の近くが多かったです。
回答
はかせの答え
セミの幼虫は地中から出てきて、近くの木などにはいあがって脱皮する場所を探すので、出てきた穴からそんなに遠くまでいけません。
それに対して、成虫はハネがあって自由に飛びまわれるので、その生活場所はぬけがらがあるところより高く、遠くまで広がります。
質問
質問6.イチョウの木の周りに幼虫が出たあとがあり、かたまってぬけがらがあった。
回答
はかせの答え
セミの種類によって産卵する木の種類や、幹や枝の太さに好みがあるようです。
好みにあった木があると、それに産卵するメスが増え、その木の根にセミ幼虫が多くとりつくという傾向があるようです。
質問
質問7.脱皮した割れ目に白いものがくっついていてビックリしました。
回答
はかせの答え
それは、長さ8ミリメートルほど、幅6ミリメートルほどの真っ白な毛がぎっしり生えたカタマリのようなものでなかったですか??そうだとすれば、それは「セミヤドリガ」といって、その幼虫がセミ成虫に寄生〔注釈1〕する小さなガのサナギが入っているマユです。
このガの幼虫はセミ、特にヒグラシ成虫の体によく寄生しています。そして、ヒグラシの成虫の体の表面でサナギになるときに真っ白なマユを作るのです。ヒグラシが多くないている山林でヒグラシを採集すると、よくこの白いマユが付いています。それが落ちてセミ幼虫のぬけがらについていたのだろうと思います。
(注釈1)…寄生とは、ある動物が他の動物の体の中や表面に住みついて、住みついた相手の体から養分を吸い取って生きること。