中屋サワ遺跡の漆製品
籃胎漆器 らんたいしっき
重要文化財
縄文時代晩期
放射性炭素年代;紀元前1385~1125年(1385~1125calB.C.)
径21.8センチ 高8.2センチ
「籃」は竹で編んだ籠のことで、籃胎漆器とは籃を素地とした漆器のことを指す。本品は精緻に編んだ竹籠に黒色漆と赤色漆を重ね塗る。底部は方形に作り、胴部が立ち上がるに従い角に丸みを持たせて口縁部ではほぼ円形となる。X線画像では素地となる籠の網目が明瞭に見て取れる。
全形が判明する縄文時代の籃胎漆器の出土例は全国的にも少なく、本品は重要文化財「中屋サワ遺跡出土品」を代表する優品である。同様の技法は現代の竹工芸でも用いられており、その源流を示す遺物としても貴重。
木胎鉢 もくたいばち
重要文化財
縄文時代晩期
幅15.6センチ 高10.0センチ
「木胎」とは木を素地とする製品のことで、本品は木の素地に赤色漆をかけた鉢である。河川跡SD40の底面近くから出土した。腐食が進んでいるが赤色漆が良く残存し、把手を中心とした円弧状の文様も確認できる。把手は素地を削り出して作り、中央部をやや凹ませる精巧な作りである。縄文時代晩期の木工技術の高さを今に伝える優品である。
木胎鉢 もくたいばち
重要文化財
縄文時代晩期
径18.6センチ 高6.0センチ
本品は木の素地に漆を塗った漆器で、口縁部から頸部にかけての一部のみ残存する。全体形状は不明だが、褐色系黒色漆を外面に塗布し、赤色漆で長方形の文様を囲み塗ることで褐色の工字状三叉文を描き出している。内面は外面と同様の褐色系黒色漆を塗布した後に赤色漆をかけているが頸部付近は赤色漆が剥落している。器厚は非常に薄く作られており、当時の技術の高さが看取できる逸品である。
籃胎漆器 らんたいしっき
重要文化財
縄文時代晩期
高9.0センチ
前出の籃胎漆器とは別個体の資料。イネ科の植物で編んだ籠を素地とし、底部は網代編み、体部はもじり編みで作り、口縁端部は内側に厚い巻縁となる。全体に赤色漆をかけて仕上げており、外面は厚く漆をかける一方、内面の漆は薄く、素地の編み目を見て取ることができる。底部は方形に作り、四隅を足状に突出させる。体部はやや丸みを帯び、口縁部は一部がわずかに残る。やや小振りではあるものの、全体の形状がよくわかる好資料である。
木胎鉢 もくたいばち
重要文化財
縄文時代晩期
幅17.6センチ 高13.2センチ
木製の素地に赤色漆を塗った鉢の残欠で、口の広いコップ型に復元できる。口縁部近くの内面と外面に僅かな盛り上がりがあり、なにか詰め物をしたようにも見える。赤色漆はその上から塗布されているため製作段階の所作と思われるが、その用途や意図は不明である。また、口縁部直下に径1センチ程度の穿孔があるがこれも用途不明である。
腕輪
重要文化財
縄文時代晩期
径9.5センチ
本品は河川跡SD40から出土した赤色漆塗りの環状木製品で、形状・大きさから腕輪と考えられる。素地に木屎漆(こくそうるし;木の粉などをまぜた漆)を盛って形を作り、その上に赤色漆を塗ったもので、長年土中にあったため素地の大半は腐食して失われ、漆によって保護された木屎部分が残存している。表面は非常に丁寧に研磨されてなめらかな曲線を描いており、縄文時代晩期の高い木工技術を示す優品である。
結歯式竪櫛 けっししきたてぐし
需要文化財
縄文時代晩期
幅6.0センチ 高5.2センチ
半円形の棟部と二叉状の突起を持つ棟頂部が残存する。櫛歯は欠損するが痕跡から元は9本歯であったことがわかる。横に並べた9本の歯材のうち中央の3本を残して両側を円弧状になるようカットし、突出した中央の3本に薄板状の横架材を紐状の材料で固定したものが骨組みとなり、これに下地となる黒色漆を塗布した後に赤色漆をかける構造である。現代の櫛のように髪を梳(くしけず)るものではなく、髪留めとして用いられたと考えられている。
漆塗注口土器 うるしぬりちゅうこうどき
重要文化財
縄文時代晩期
高13.2センチ
宝珠型の注口土器で、焼成した土器の外面に下地となる黒色漆を塗り、その上に赤色漆を重ね塗る。胴部に沈線と入組三叉文が廻り、頂部は閉じているが蓋状の表現がある。注口部は1箇所で、反対側に開口部があり、さらにその下に小穿孔がある。本品は底部のみ欠損するものの全体の形状がほぼ判明する優品である。中屋サワ遺跡は漆塗木製品に比べ漆塗土器の出土数が少なく、本品以外では破片が数点出土したのみである。