大野湊神社の夏季大祭

民俗文化財 無形民俗:風俗慣習
大野湊神社の夏季大祭(おおのみなとじんじゃのかきたいさい)

大野湊神社の夏季大祭の詳細
所在地 金沢市寺中町ハ163番地 大野湊神社夏季祭礼行事奉賛会
市指定文化財 平成23年9月1日指定
開催時期 8月第一日曜日を最終日とする3日間

金沢市寺中町に鎮座する大野湊神社の夏季大祭は、通称「金石の夏祭り」として市民に親しまれており、神輿行列に曳山や様々な民俗芸能が供奉する、金沢市において最大規模の祭礼の一つです。かつては8月1日から3日まで行われていましたが、現在は8月第一日曜日を最終日とする3日間で行われています。
夏季大祭が行われる大野湊神社は延喜式内社の古社で、本殿には中央に護国八幡神(八幡社)、向かって右側に天照大神(神明社)、同左側に猿田彦大神(佐那武社)が祀られています。享保14年(1729年)の「大野湊神社縁起」によると、神明社と佐那武社はもともと現在の金石海岸の「真砂山竿の林」に鎮座していたのを、社殿が炎上したため建長4年(1252年)に現在地である離宮八幡宮へ遷座されたとあります。以降、年に一度、旧地に鎮座されていた当時を偲んで海岸に仮殿を建てて2柱を奉遷するようになりました。これが現在の夏季大祭の由来とされています。
この祭礼の始まりは定かではありませんが、文献により少なくとも江戸時代初期の寛永期(1624年~1645年)の中頃には既に行われていたことが裏付けられています。また、宝暦4年(1754年)の「佐那武大明神御神幸行烈之次第」に記載されている行列の基本形態は現在とほとんど変わりがなく、神社の歴史と深い繋がりを持つ行事の旧態が現在にまで受け継がれていることがわかります。
祭礼は天照大神と猿田彦大神の旧社地への里帰りが主体となります。大祭初日の午前10時、2柱を奉じた2基の神輿を中心とする渡御行列が大野湊神社を出発し、決められた順路を通り金石の海岸に建てられた仮殿まで巡幸します。順路の家々は1軒ごとに若竹に結んだ提灯を掲げ、道には塩をまいて神輿を迎えます。神輿の巡幸に際しては、高いところから見下ろしてはならない、屋根に布団を干すようなことをしてはならない、仕事の手を休めて神輿を迎える、などの禁忌や決まりごとがあります。また、巡幸中、神輿の下をくぐると無病息災の効果があると言われています。
初日に仮殿に到着した2柱は最終日に大野湊神社へ帰座します。最終日の順路は初日と異なり毎年変更されますが、途中、御旅所として冬瓜町の天磐櫲樟船社、新浜町の西ノ宮社に立ち寄ります。
また、神輿の行列には神霊の依代としての曳山17基と太鼓台22台が供奉する他、悪魔払、子供奴、獅子舞、米上げ、梯子登り等の民俗芸能が参加し、演舞を奉納します。これらは金石地区の民俗慣習の集合体とも言え、実に壮大な見応えのあるものとなっています。
このように、大野湊神社の夏季大祭は、神輿、曳山、民俗芸能で構成される行列の規模の大きさと、縁起さながらの行事の旧態を今に伝えているところに大きな特色があります。夏季大祭の期間中には境内、道中は見物人であふれかえり、家をあげて、町をあげて人々が祭りに参加しているさまを見ることができ、神々への感謝と歓喜がよく顕現されています。地元では「盆に帰らずとも祭りに帰れ」といわれるように、地区の人々の生活の節目となる重要な民俗行事であり、規模が大きく歴史的背景にも特色があり、金沢の祭礼行事の代表の一つとして貴重なものです。

大野湊神社の夏季大祭にて、鬼のような面を付けている人、曳山や神輿の行列が行われている様子の写真

【参考】大野湊神社の指定文化財

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