辰巳用水 調査~史跡指定~整備
辰巳用水(たつみようすい)の調査と整備
東岩取水口
辰巳用水は現在、兼六園の霞ヶ池(かすみがいけ)をはじめとする泉水やまちなかの用水を潤す水源として、金沢の景観を織りなす重要な歴史遺産となっています。
金沢市では、辰巳用水のさまざまな調査を行った結果、平成22年2月22日に国史跡の指定を受けました。
1. 辰巳用水の概要・歴史
辰巳用水の隧道
辰巳用水は寛永(かんえい)9年(1632年)、三代藩主前田利常(まえだとしつね)のときにつくられ、上水として金沢城に引かれていました。現在の兼六園から犀川上流の取水口までは約11キロメートルの距離があり、上流部には約4キロメートルの隧道(ずいどう・トンネル)も掘られています。当初、取水口は現在よりも約730メートル下流(現:上辰巳町地内)につくられたと考えられています。その後、取水量を増やす目的で約130メートル上流のめおと滝の対岸に付け替えられ、安政(あんせい)2年(1855年)にはさらに約600メートル上流の、東岩(ひがしいわ)へ移されました。これが現在の取水口です。
2. 流路の測量調査
辰巳用水遊歩道
上辰巳町地内の東岩取入口から兼六園に至る隧道や水路について測量調査を実施しました。この調査により、用水が流れている位置や形状、隧道にあけられている横穴の位置や数などが具体的に明らかになりました。
3. 絵図・古文書の調査
江戸時代の辰巳用水の景観を描いた絵図は、複数知られています。調査では、絵図をもとに辰巳用水の流路や周辺施設の変遷を調べるとともに、記述についての分析を進めました。
4. 発掘調査
兼六園の霞ヶ池は辰巳用水が水源
辰巳用水築造・修築時の作業場や、旧流路の探索を目的に、発掘調査を実施しました。絵図や現在の地形をもとに、地中レーダー探査など科学的手法も取り入れて、旧流路の探索をしました。
また、辰巳用水の水流を利用して黒色火薬を製造していた土清水塩硝蔵の調査も実施しました。
5. 三段石垣の調査
三段石垣
上辰巳町と辰巳町の町境付近の山肌には、辰巳用水に沿って三段に積まれた長さ約260メートルの石垣が築かれています。平成19年度には、この石垣の規模と形状を明らかにするための測量調査を実施しました。平成20年度には、石垣の構造を明らかにするため、発掘調査も実施しました。
6. 辰巳用水の整備
金沢市では、平成22年2月22日の史跡指定を受け、平成22年度に保存管理計画を、同23年度に整備基本計画を策定し、同24年度の整備基本設計を経て同25年度より史跡整備を実施しています。
辰巳用水上流部の隧道区間については3Dレーザー測量などを用いて現状を記録したうえで隧道補修を行うほか、開渠部分では法面補修、支障木撤去などの保全工事を行っています。