金沢縄文ワールド 企画展示
企画展示コーナー
【開催中の企画展】紫錦台中学校の下に眠る江戸時代
現在、金沢市には計79校の公立小中学校があり、そこでは数多くの児童や生徒が学び、巣立っていきました。
実は、小中学校の大部分は何十年も同じ場所にあるため、その下には様々な時代の遺跡が眠っていることが多いのです。
金沢市内の小中学校では近年、統廃合や建物の老朽化により校舎や設備などが建て替えられることが増えてきました。遺跡が眠っている場所で工事が行われる場合はどうなるのか... そう、発掘調査です!
金沢市内には敷地内で発掘調査が行われた小中学校がいくつかありますが、金沢市立紫錦台中学校もその中の一つです。
江戸時代、紫錦台中学校の周辺は加賀藩の重臣で加賀八家の一つである前田家(長種系)家臣の居住地などが広がる武家屋敷でした。
平成25年度から27年度にかけて行われた発掘調査では、江戸時代の武士の生活に関する様々な遺構と遺物が見つかっています。
今回の企画展では、紫錦台中学校で行われた「金沢城下町遺跡(飛梅町3番地点)」の3次にわたる発掘調査で出土した江戸時代の出土品を展示します。
中学校のわずか50センチメートル下に存在する江戸時代を体感し、遺跡をより身近に感じて頂ければ幸いです。
会期
令和6年12月14日(土曜日)から令和7年3月9日(日曜日)まで
主な展示資料
金沢城下町遺跡(飛梅町3番地点)出土品
暦手碗(文化15年銘)、ジンボトル残欠(VOC銘)、瓦(梅鉢文)、陶磁器類、土人形、刀装具 ほか
合計80点
展示資料ピックアップ!
暦手碗(文化15年銘)
暦手碗(こよみでわん)とは、器の内外面に歳時記を精緻に書き込んだ碗のこと。本品は九谷産の磁器碗で、口縁の一部が欠損するもののほぼ完形に近い良品である。九谷産の暦手碗は金沢市内の遺跡から複数の出土例があり、いずれも外面に暦註、口縁部内面に年号・干支・年日数、見込に吉方位を呉須で記す。本品もこの定型に倣うものであり、口縁部内面の記載から文化15年(1818)の暦を記したものであることがわかる。
紅猪口(底部からみた写真)
本品は「紅猪口(べにちょこ)」と呼ばれる口紅の販売容器。赤色絵で見込に「君ならて」、外面に「誰にか/見/せん/梅の/色」と書く。古今和歌集所収の紀友則(きのとものり)の和歌「君ならで誰にか見せん梅の花色をも香をも知る人ぞ知る」を大胆にアレンジしており、「口紅を付けた姿をあなた以外の誰に見せようか」という意味の俳句を記すことで商品の口紅を連想させている。
ジンボトル残欠(VOCA銘)
ジンボトルは酒類、主にジンを保管・輸出するための瓶。本品はオランダ製のケルデル瓶と呼ばれるガラス製ジンボトルの一部で、肩部の刻印のみ残る。刻印はオランダ東インド会社アムステルダム本社のロゴ(VOCA)である。このようなジンボトルは江戸時代の日本にも輸入されていたようで、空瓶は武家の間で重宝されたという。