昇降機の耐震についてご紹介
令和5年は、1923年9月1日(大正12年)に発生した関東大震災から、100年の節目に当たります。
それぞれの立場で、防災について考え、災害に備える機会としていただければと思います。
ここでは昇降機の耐震についてご紹介したいと思います。
昇降機耐震基準の変遷
□旧耐震基準
1972年(昭和47年)
社団法人日本エレベーター協会が「昇降機防災対策標準」を制定し、下記基準を公表した。
◆主な基準
・かごや釣合おもりの脱レール防止対策
・巻上機や制御盤の転倒防止対策
・地震発生時のエレベーター運行方法
□81耐震基準
1981年(昭和56年)※宮城県沖地震
財団法人日本建築センターが「エレベーター耐震設計・施工指針」を公表した。
旧耐震基準に下記防止対策を追加。
◆主な基準
・かごや釣合おもりの脱レール防止対策の強化
・巻上機や制御盤の転倒防止対策の強化
・ロープ類引っ掛かり防止対策の強化
◆外部リンク先
1978年宮城県沖地震_仙台市
□98耐震基準
1998年(平成10年)※兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)
財団法人日本建築設備・昇降機センターが「昇降機耐震設計・施工指針」を公表した。
81耐震に下記基準を追加。
◆主な基準
・釣合おもりブロックの脱落防止対策の追加
・巻上機や制御盤の転倒防止対策の強化
・ロープ類引っ掛かり防止対策の強化
・エスカレーターの耐震設計基準の制定
□09耐震基準
2009年(平成21年)※新潟県中越地震、千葉県北西部地震
建築基準法改正により、耐震基準の目的が「機能維持・破損防止」から「人命最優先・安全走行」へと変化。
◆主な基準
・戸開走行保護装置(UCMP)の義務化
・地震時管制運転装置の義務化
・予備電源設置(UPS)の義務化
・ガイドレール・レールブラケットの強化
・長尺物振れ止め対策強化
□14耐震基準
2014年(平成26年)※東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)
東日本大震災時、エレベーターの釣合おもりの脱落が多数みられた。
地震時における安全を強化した最新の耐震基準。
◆主な基準
・地震その他の震動によってエレベーターが脱落するおそれがない構造方法
・エレベーターの地震その他の震動に対する構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準
・地震その他の振動によって釣合おもりが脱落するおそれがない構造方法
□09耐震基準による安全対策
耐震の目的が大きく変わり以下の装置の設置が義務付けられた。
・戸開走行保護装置(UCMP)
・初期微動(P波)感知地震時管制運転
・停電時自動着床装置
・耐震構造強化
法改正以前に作られたエレベーターは新たに定められた法令の規定が適用されないこと(既存不適格)が定められています。
ですが、過去事例と同様の事故が発生するリスクがありますので、エレベーターの所有者、管理者の皆様には積極的な既存不適格の解消をお願いいたします。
■戸開走行保護装置(UCMP)
駆動、制御機器に故障が発生し、万が一エレベーターのドアが開いた状態で動き出した場合でも、すばやく検知しエレベーターのドアが開いた状態で動かないようにする安全装置です。
・ブレーキ二重化
片方のブレーキが故障しても、もう片方のブレーキで停止できる。これらのブレーキは連動されていません。
・戸開走行検出装置(かごの移動検知)
ドアの開閉状態を検出するセンサーと、かごが乗場から一定距離以上移動した場合に感知する特定距離感知装置を設けることにより戸開走行を検出する。
・通常の制御回路とは独立した制御回路
通常制御プログラムが故障しても、安全にエレベーターを制御して停止させることができる。
■初期微動(P波)感知地震時管制運転
地震には、初期微動(P波)と本震(S波)の2種類があります。
地震発生時の初期微動(P波)を検知し、本震(S波)が到達する前にかごを最寄り階に停止させ、ドアを開き利用者の閉じ込めを防止します。
■停電時自動着床装置
停電を検知した場合に動力電源をバッテリー(無停電電源装置(UPS))に切り替え、自動的にエレベーターを最寄り階まで運行して閉じ込めを防止します。