石造金剛力士立像(吽形)

有形文化財 美術工芸品:彫刻
石造金剛力士立像(吽形) (せきぞうこんごうりきしりゅうぞう(うんぎょう))

石造金剛力士立像(吽形)の詳細
所在地 金沢市長土塀1丁目16番6号 今枝仁王尊(いまえだにおうそん)
市指定文化財 平成28年9月12日指定

 石造金剛力士立像は、地元の長土塀地区で「今枝仁王尊」の名称で親しまれている石造仏である。今枝氏は、二代藩主利長の代から前田家に仕え、人持組筆頭で代々家老職を務め、最大1万4千石を領した。金剛力士像は、今枝氏の下屋敷庭内にあったが、廃藩後、上屋敷を廃して下屋敷内に居住の際、街路側に入口をもつ堂を建てて安置した。霊験(れいげん)あらたかな霊仏として崇敬(すうけい)されていたことは室鳩巣(むろきゅうそう)筆と伝えられる「此奥霊験二王在(このおくれいげんにおうあり)」の石碑や「天保六年(1835年)九月」の銘文をもつ橘観斎筆の「執金剛神」の扁額などがあり、現在は今枝仁王尊奉賛会により堂舎内に保管され、地元の守護仏として多くの参詣者を集める。
 金剛力士とは、仏教の護法善神である天部の一つである。開口する阿形像と口を結んだ吽形像の2体を一対で、邪気を払う守護神として寺院の表門や須弥壇の左右に安置される。
 金剛力士立像は、花崗岩を石材とし、大きな転石から立体的に彫り出す厚肉彫り技法により造像されている。像背面は中央部が自然面を残すが、背面両側部は矢穴技法により、不要石材部位が取り去られている。像側面はタガネかノミによる細かな調製痕が残る。像表面は周縁部に同様の加工痕が残るが、全体的には丁寧に仕上げられている。像のプロポーションは、木彫像に比べ肉付きは弱いが、頭部と体部とはバランスがとれている。
 今枝氏への像伝来の経緯は不明であるが、作工が酷似すると考えられる石造金剛力士像(阿形)が滋賀県蒲生郡竜王町鏡所在の西光寺跡で確認されており、今枝氏が当地に持ち運んだものと想定される。
 このように石造金剛力士立像は、木彫像に比較すると材質の限界により像表現が簡略化されている。鎌倉時代的な写実性は認められないが、部分的に誇張する表現がされていないため像全体のバランスは保たれ、素朴な印象を受ける室町時代的な特徴がうかがえる。本像は全国的に木彫仏が多いなか、中世にまで遡る石造仏の例は珍しく、金沢における仏像文化の歴史を考察する上で極めて重要であり、市指定文化財としての価値を十分に有する。

肘を曲げて右手を挙げ、左手は下におろして立っている、石の表面に掘られた石造金剛力士立像(吽形)の写真

石造金剛力士立像(吽形)

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